Aさんの事例から学ぶ―1人1人を大切に

07年08月23日 | とし子からの手紙

img_0039.JPG 私は看護師である。「1人1人の事例から学ぶ」姿勢を大切にしてきた。患者さんから教えられ、鍛えられて看護師は育つ。

私の所に国保証がなくて相談に来られたAさんは、息子の保証人となって多額の借金を返しておられた。2人の息子を早くに亡くなった夫の分まで、必至で育ててきた。働きつづけていた。働いても働いても経済的には苦しかった。自己破産の検討もしたが、「息子の借金だから…」と返しつづけた。

しかし、次第に年をとり、年金生活になった。障害のある長男を気遣い、自分の体調が悪くても入院する決意がつかない。どうにもならなくなると、

「崎本さん、たすけて!!」と電話があった。そんな時、私はAさん宅へかけつけた。頑張り屋のAさんが電話してくる時はS0Sなのだと思っていた。

昨年末あったとき、ひどくやせていたので、体調を聞く。「早く受診しないと手遅れになる」と直感。

関係病院と連携して入院治療にこぎつけたが、結局8/11に亡くなった。

Aさんは「私の治療費を長男の負担にならないように…」と心配しつづけた。そんな母心が私には心に痛かった。経済的な困難が生命をうばう1つの事例である。Aさんの例は他にも多い。

私は発言した。「手術など治療で生命を救える。そしてもう1つ、人間は社会的存在だから社会制度をよくすることも生命を救うことにつながる。Aさんが、民医連の病院と出会えてよかった。民医連はまじめに生きてきても困難を抱えた多くの人々の生命の拠り所だと自覚してほしい。今、月に2?3人もの人が救急車で運ばれ、死亡確認だと聞いた。どんなくらしをしておられたのか、もっと早く、民医連とつながっていたら…と思う。こういう人々の事例にも学びたい。」と。

私はどこにいても看護師でいたい。看護の知識を持って、この世の中で「命は何より大切」と発信しつづけたいとあらためて思った。